元世界チャンピオン・三土手大介さんに聞く、パワーリフティングの魅力

11月14日(土)・15日(日)の二日間にわたって開催した「パワーアップ講習会」。講師にお招きしたパワーリフティング・ベンチプレス元世界チャンピオンの三土手大介さんに、お話を伺いました。

実はチャレンジしやすい!? パワーリフティングは『誰でも手軽にできる競技』

―パワーリフティングの魅力を教えてください

私がパワーリフティングのどこに惹かれたかというと、単純に力への憧れですね。パワーリフティングは、スクワット、ベンチプレス、デッドリフトの3種目で構成されていて、人の最も基本的な「立つ」「押す」「引く」という動きの中で、最大重量を持ち上げるという競技です。もちろん技術も大切だけれど、“純粋に力のあるものが勝つ”というところに魅力を感じました。

私自身、小学4年生から空手をやっていたのですが、中学生になったときに、筋力の必要性を感じて、身体を鍛えるためにウエイトトレーニングを始めました。パワーリフティングは、ウエイトトレーニングの『BIG3』が直接競技になっていたので、面白そうだなと思って力試しで挑戦しました。

ウエイトリフティングは技術的に難しいんだけど、パワーリフティングはウエイトトレーニングの基本的な種目で構成されているから、気軽にチャレンジしやすいと思います。

意外かもしれませんが、適度にやれば、健康にもすごく良いですし、アンチエイジングにもなるんですよ。若い世代からお年寄りまで、女性もたくさんいらっしゃいます。60歳で競技を始めて、69歳で年齢別の世界チャンピオンになった人もいます。やろうと思えば誰でも手軽にできる競技なんです。そういったところも魅力だと思いますね。

―これからパワーリフティングに挑戦する方へメッセージをお願いします

まず気軽にできる競技ですし、どんなレベルの人でも筋力をしっかりと高めていくと、それだけ身体が楽になりますから、ぜひ挑戦してほしいです。若い子だったら、真剣にトレーニングしたら、今持ってる筋力の倍ぐらいには簡単になれますよ!

小学校高学年くらいから、私のジムに、ウエイトトレーニングをやりたいと言って来る子がいます。昔からの迷信で、子どものときにトレーニングすると身長が伸びないとか言いますが、適度に正しくトレーニングすれば、関節が刺激を受けて、身長はめちゃくちゃ伸びます。

私も13歳からトレーニングをしてますし、パワーリフティングの世界も、14歳から競技があるので、早くから始めて、チャンピオンを目指す人もいます。特に男の子だったら、一度は力への憧れを持つことがあると思いますから、パワーリフティングは気軽に挑戦できる、いい種目じゃないかな。

私のジムは「No Limits」と言って、限界はないという意味ですが、パワーリフティングは自分の限界を超えていく喜びを感じられますよ。

―最近の学生さんは、ウエイトトレーニングを練習に取り入れている人が多いと感じます

そうですね。ただ、間違ったやり方だと、せっかくトレーニングしても自分の競技に繋がらないこともありますから、注意が必要です。競技をやっている人は、自分の競技の練習もしないといけないのに、ウエイトトレーニングも、となると本当に時間がないですよね。限られた時間の中で、最大の効果を出すために、どういうものを選択したら良いかを知っておくといいですね。

今、情報が本当に多くて、無駄な情報も入ってきてしまいます。そんなにいいトレーニングではなくても、情報を流すのがうまい人たちもいます。自分の専門外のことだと、情報の良し悪しがわからないので、情報を選別する能力というのも、今日と明日のセミナーで皆さんに持ち帰ってもらえたら良いなと思います。

いま、スポーツを頑張る子どもたちへ伝えたいこと

自分で自分の限界を決めないこと

パワー系の競技や格闘技なんかだと、日本人はヘビー級で活躍できないとか、外国人が強いというイメージがありますよね。実際、パワーリフティングは、日本人の世界チャンピオンは軽量級(一番下のクラス)で過去に2人だけでしたし、重量級での世界チャンピオンは私が日本人初でした。

でも、私は「日本人である前に、地球人!」だと思っています。ロシアとかアメリカは強いけど、同じ地球に住んでいる人間だから一緒だ! と自分に言い聞かせてやっていました。日本人だからパワーで負けてしまうという先入観を持たずに、考え方から「限界を超える」というのが大事だと思います。

何より、自分のスポーツを好きになってほしい

自分の競技を好きになって、楽しくできることがすごく大事。トレーニングが義務的になってしまうとダメです。

子どもたちは、「このトレーニングは何の意味があるのか?」って、今はわからないかもしれません。学校の勉強も一緒ですけど、後々、意味がわかってくるんですね。わかってきたら、さらに自分に吸収できるように、改良して、考えながらトレーニングすることが大事ですね。

今まで、いろいろなスポーツ選手に会ってきましたが、皆さんすごく考えてます。頭のいい人が多いです。がむしゃらにやるのはもちろん大事だけど、考えながらやるのはもっと大事。何より自分の競技を好きになることがすごく大事。やっていて楽しくないと伸びないですからね

「休む勇気」はすごく大事

それから、なるべくケガをしないようにしてほしいです。ケガをしそうで休むのと、怠けて休むのは全然違いますから。休む勇気はすごく大事です。

特にレギュラーを争っているようなスポーツだと、どうしても休めないと思うんですけど、そこで無理してしまって、将来に響くケガをすることもあります。

私自身も、身体ボロボロですよ。若いころは、痛みを無視して、痛み止めを飲みながらトレーニングしていました。「関節は消耗品なんだよ」って、若い頃に誰かに言ってもらえてたら、もう少し長く競技を続けられたかなと思っています。 トレーニングも大事ですけど、休む勇気も本当に大事。これを、いまの子どもたちには知っておいてもらいたいです。


「パワーリフティング」と聞くと、筋骨隆々の男性たちの競技かと思っていましたが、三土手さんのお話を聞いて自分にもできそうだ!やってみようかな?と思ってしまいました。また、世界一まで上り詰めた選手からのメッセージは、きっと鹿児島のスポーツ少年少女の心に響くことでしょう。子どもたちをサポートする我々大人たちも、心に留めておきたいことですね。(取材担当:藤山)